ちょっとえげつない出産秘話。
結婚11年目。
様々な悪戦苦闘の末
あきらめていた待望の第一子を授かり
無事に生まれてきてくれてもうすぐ二ヶ月。
本日まで順調に育ってくれてます。
誰に教わったわけでもないのに
生まれたばかりですぐ乳飲むし
みるみる陸上に適した身体に変化するし
日に30gのテンポでっかくなりよるし
赤ん坊ってのは恐ろしいほどの能力でもって
驚愕の成長を実現する超人たちなんですね。
さて。
出産直後の報告でも、ちとふれましたが。
今回の出産、ちょこっと特殊なものでした。
なかなかない経験やろうし
備忘録的に書き残しちょこかと。
長くなること請け合いですので
興味があればお暇なときにでも御笑読下さい。

いつ読んでもいいんだけども。
話は赤ん坊が生まれる前日
僕ら夫婦の夕食から始まります。
4月12日 19:40 【誕生まで8時間】
「知っちょる?しんくん。
出産の前には焼肉がいいらしいんよ。
陣痛を促すらしいし
出産時のスタミナにもなるち。
あとオロナミンCな。あれも効くち。
赤ちゃんサササーッち出るち。」

ずいぶん楽天的な話だったけど
焼肉屋に行ける口実を逃したくなかった僕は
オシルシがあったその日の夜
二人で近所の焼肉屋さんに行くことにした。
慢性的に蔓延る、やんごとなき理由から
高級でない肉を控え目にオーダー。

ほどよくお腹を満たした僕らは
帰りにオロナミンCを買って帰った。
「これで完璧やな。スルッといくな」
まるで数時間後を予言するかのように
妻は笑いながらオロナミンCを飲んだ。
焼肉の数時間前。
高校の同級生がたまたま店に来てくれていた。

聞けば彼の奥さんも妊娠していたとのこと。
つい先日お子さんが生まれたらしい。
彼は予定日を12日後にひかえた僕に
少し先輩目線で出産経験談を聞かせてくれた。
「陣痛が始まってもな
すぐに病院には行けんのよ。
おなかの痛みが段々規則的になって
うちは痛みと痛みの間隔が10分になって
それが2時間以上続いてからやっと
『じゃあ病院に来て下さい』っちなる。
しかもそこからがまた長いけんな。
大変で、出産は。
・・・覚悟せんえ(ニヤリ)」
ただいたずらにビビらせた彼のアドバイスも
残念ながら僕らの出産に役立つことはなかった。
12日 22:00 【誕生まで5時間40分】
家に帰ってシャワーをすませ
二人で出産に思いを巡らせていた。
おなかの張りは多少あるものの
いつもと変わらない様子の彼女。
「今夜はなんもなさそうや!
私は何回もトイレで起きるけん
しんくんは別の部屋でゆっくり寝て!
きたるべく過酷な出産に向け
ぜひ英気を養って下さい!」
組合長の挨拶みたいなことを言う妻に甘え
僕は客間でゆっくり寝かせてもらうことにした。
もし、いつも通り
同じ部屋のベッドに寝ていたなら
あんなことにはならなかったと思う。

13日 3:20 【誕生まで20分】
ぐっすり寝ていた僕が起こされた時
彼女はすでに青白い顔、虫の息で
時折うめき声をあげながら
必死に痛みを耐えていた。
急に起こされた寝ぼけマナコが
突如立たされた非常事態のど真ん中。
状況を理解できずにアタフタするバカ旦那に
息も絶え絶えの辛そうな彼女が一言。
「病院に・・・電話して・・・」
その言葉の緊迫感に
寝ボケ亭主はやっと気付いた。
わかった。これは多分陣痛や。
しかもひょっとしたら、
もうすぐ生まれるかもしらん。
13日 00:00 【誕生まで3時間40分】
少し時間を戻してみる。
僕がまだアホみたいに眠っていた深夜0時。
生理痛のような痛みをうっすら感じ始めていた妻は
少し困っていた。

というのも、実は彼女。
数日間出ていなかったからと
夕食後に妊婦用の便秘薬を飲んだらしく。
この痛みは便秘薬によるものやろな。
出産間近に飲むべきじゃなかったー。
イタタタタ、失敗失敗。イタタ。
陣痛というのは
「そろそろ出るよ~」という赤ん坊の意思が
お母さんに送られる神秘のサイン。
一本の管で繋がれた二つの生命体
その一方から送られてきた重要なメッセージを
この後、数時間の間
「いやすごい!この薬まじイタ過ぎ!」
便秘薬の副作用だと勘違いした妻。
この状況、実にファニー。
薬を飲んだことをひどく後悔しながら
妻と痛みによる戦いの火蓋は切って落とされた。
13日 01:40 【誕生まで2時間】
「…やっぱりこれ、なんかおかしくない?」
楽な姿勢を探しつつ
我慢と葛藤を続けていた妻も
徐々に増してくる痛みに対し
いよいよ陣痛を疑い始めていた。
便秘薬疑惑に加え
「初産は予定日より遅くなる」という
一般的な統計を真に受けていたこと、
ずっと痛みの間隔がバラバラだったことも、
本陣痛かどうかの判断と
僕を起こすタイミングが遅れた理由だったと
後に彼女は言った。
13日 02:30 【誕生まで1時間10分】
この時間帯になると
妻もさすがに陣痛であることは理解していた。
初産の場合。
陣痛の前にある「前駆陣痛」というもの含めると
痛み始め⇒出産までの時間が
1日~2日かかる人もざらだという。
例えこれが陣痛であったとしても
まだまだ長い戦いの始まり。
旦那は朝になって起こせばいい
いけるとこまでいってみよー、と
肝の据わった覚悟でもって
実際に生まれる直前まで
1人でじっと耐え抜いた彼女。

妻の強さが果てしない。
13日 03:30 【誕生まで10分】
「妻が激しい痛みを訴えてます。
これからそちらに伺ってもよろしいでしょうか?」
妻に起こされ、電話を促された僕は
なんとか状況を理解した後
慌てて深夜の産婦人科に連絡した。
「奥様は電話にでられますか?」
「無理だそうです。とてもツラいようで」
「痛みの間隔は何分くらいですか?」
「一定ではないんですが、すでに5分~10分程度のようです」
そんなやり取りをしている僕のそばで
ずっと我慢し続けていた彼女が
突然、堰を切ったかのように叫んだ。
「あー!!出るっ!!」
「・・・。
あ、あの。
妻が『出る』って・・・言うてます」
「えっ!?うそ!!
出るって赤ちゃんっ!?
・・・すぐに準備をしますので
来れそうなら、すぐに来てください!!
十分気をつけて!!」
彼女の叫び声で、一気に状況が変わった。
いや、
状況は少しずつ、徐々に変わっていたのだけれど
妻を含む僕らの認識が
この緊急事態に追いついた、というのが正しいか。
妻はどこかのタイミングですでに破水していて
これまでの痛みは本陣痛だった。
生まれるまでの時間の猶予が
どれくらいあるのかわからないけど
赤ん坊の頭はすでに彼女から出かけている。
僕はこれまでにないほど焦った。
病院へ行くために車の鍵を探すのだけど
半分パニックで室内を右往左往。
「焼肉屋に・・・行った時の服・・・の中」
女の人って本当にすごい。
赤ちゃん出かかっている人生初体験の最中に
鍵のありかを冷静に思い出せるのだもの。感服。
車を玄関に回し
妻を迎えに行った時
ちょうど痛みの最高潮だった。
「歩けるか?」
「ムリムリムリムリ!!」
痛みが引くタイミングまで待ち
肩を抱かせてゆっくり歩く。
「あ・・・ああ・・・出そう!出そうや!出るっ!」
階段を降りる途中で彼女が叫ぶ。
「いやいやいや!ダメよ!
もうちょい我慢!まだ出さんじょって!」
考えたくはない「万が一」を考えて
僕は彼女の足の付け根に手を添えながら
ゆっくりゆっくり階段を降りる。
妻をなんとか後部座席に乗せたけれど
時間に余裕があるとは思えない。
落ち着いて。
でも、急いで。
間違いなく、人生で一番緊張するドライブ。
僕は運転席に乗り込み
ジワッとアクセルを踏んだ。
13日 03:40 【誕生まで0分】
その時は突然訪れた。

危ない体勢で運転をしていた最中
妻が大きな声で叫ぶと
僕の左手が重みを感じた。
運転中の僕は振り返ることができないが
ショーツ越しに受け取ったのは
まぎれもなく、赤ん坊だった。
いったん運転を止めて対応するべきか
一秒でも早く病院に向かうべきか。
悩む僕を置いてけぼりに
赤ん坊は一気に「ズリュッ」と出てきて
運よく掴みやすい格好で、背中が掌に収まった。
その直後、僕の手の中で
出てきたばかりの赤ん坊が
初めてとは思えない見事な発声で
この世界の空気を煌びやかに震わせた。
これが出産までの一部始終。
病院についてからがまた
見事なまでの爆笑エピソードがチラホラ。
僕に根気があればこっそり書いちょきます。
とにかく無事でホントに良かった。

唄う仏壇屋ともども
末永く宜しくお願い致します。
様々な悪戦苦闘の末
あきらめていた待望の第一子を授かり
無事に生まれてきてくれてもうすぐ二ヶ月。
本日まで順調に育ってくれてます。
誰に教わったわけでもないのに
生まれたばかりですぐ乳飲むし
みるみる陸上に適した身体に変化するし
日に30gのテンポでっかくなりよるし
赤ん坊ってのは恐ろしいほどの能力でもって
驚愕の成長を実現する超人たちなんですね。
さて。
出産直後の報告でも、ちとふれましたが。
今回の出産、ちょこっと特殊なものでした。
なかなかない経験やろうし
備忘録的に書き残しちょこかと。
長くなること請け合いですので
興味があればお暇なときにでも御笑読下さい。

いつ読んでもいいんだけども。
話は赤ん坊が生まれる前日
僕ら夫婦の夕食から始まります。
4月12日 19:40 【誕生まで8時間】
「知っちょる?しんくん。
出産の前には焼肉がいいらしいんよ。
陣痛を促すらしいし
出産時のスタミナにもなるち。
あとオロナミンCな。あれも効くち。
赤ちゃんサササーッち出るち。」

ずいぶん楽天的な話だったけど
焼肉屋に行ける口実を逃したくなかった僕は
オシルシがあったその日の夜
二人で近所の焼肉屋さんに行くことにした。
慢性的に蔓延る、やんごとなき理由から
高級でない肉を控え目にオーダー。

ほどよくお腹を満たした僕らは
帰りにオロナミンCを買って帰った。
「これで完璧やな。スルッといくな」
まるで数時間後を予言するかのように
妻は笑いながらオロナミンCを飲んだ。
焼肉の数時間前。
高校の同級生がたまたま店に来てくれていた。

聞けば彼の奥さんも妊娠していたとのこと。
つい先日お子さんが生まれたらしい。
彼は予定日を12日後にひかえた僕に
少し先輩目線で出産経験談を聞かせてくれた。
「陣痛が始まってもな
すぐに病院には行けんのよ。
おなかの痛みが段々規則的になって
うちは痛みと痛みの間隔が10分になって
それが2時間以上続いてからやっと
『じゃあ病院に来て下さい』っちなる。
しかもそこからがまた長いけんな。
大変で、出産は。
・・・覚悟せんえ(ニヤリ)」
ただいたずらにビビらせた彼のアドバイスも
残念ながら僕らの出産に役立つことはなかった。
12日 22:00 【誕生まで5時間40分】
家に帰ってシャワーをすませ
二人で出産に思いを巡らせていた。
おなかの張りは多少あるものの
いつもと変わらない様子の彼女。
「今夜はなんもなさそうや!
私は何回もトイレで起きるけん
しんくんは別の部屋でゆっくり寝て!
きたるべく過酷な出産に向け
ぜひ英気を養って下さい!」
組合長の挨拶みたいなことを言う妻に甘え
僕は客間でゆっくり寝かせてもらうことにした。
もし、いつも通り
同じ部屋のベッドに寝ていたなら
あんなことにはならなかったと思う。

13日 3:20 【誕生まで20分】
ぐっすり寝ていた僕が起こされた時
彼女はすでに青白い顔、虫の息で
時折うめき声をあげながら
必死に痛みを耐えていた。
急に起こされた寝ぼけマナコが
突如立たされた非常事態のど真ん中。
状況を理解できずにアタフタするバカ旦那に
息も絶え絶えの辛そうな彼女が一言。
「病院に・・・電話して・・・」
その言葉の緊迫感に
寝ボケ亭主はやっと気付いた。
わかった。これは多分陣痛や。
しかもひょっとしたら、
もうすぐ生まれるかもしらん。
13日 00:00 【誕生まで3時間40分】
少し時間を戻してみる。
僕がまだアホみたいに眠っていた深夜0時。
生理痛のような痛みをうっすら感じ始めていた妻は
少し困っていた。

というのも、実は彼女。
数日間出ていなかったからと
夕食後に妊婦用の便秘薬を飲んだらしく。
この痛みは便秘薬によるものやろな。
出産間近に飲むべきじゃなかったー。
イタタタタ、失敗失敗。イタタ。
陣痛というのは
「そろそろ出るよ~」という赤ん坊の意思が
お母さんに送られる神秘のサイン。
一本の管で繋がれた二つの生命体
その一方から送られてきた重要なメッセージを
この後、数時間の間
「いやすごい!この薬まじイタ過ぎ!」
便秘薬の副作用だと勘違いした妻。
この状況、実にファニー。
薬を飲んだことをひどく後悔しながら
妻と痛みによる戦いの火蓋は切って落とされた。
13日 01:40 【誕生まで2時間】
「…やっぱりこれ、なんかおかしくない?」
楽な姿勢を探しつつ
我慢と葛藤を続けていた妻も
徐々に増してくる痛みに対し
いよいよ陣痛を疑い始めていた。
便秘薬疑惑に加え
「初産は予定日より遅くなる」という
一般的な統計を真に受けていたこと、
ずっと痛みの間隔がバラバラだったことも、
本陣痛かどうかの判断と
僕を起こすタイミングが遅れた理由だったと
後に彼女は言った。
13日 02:30 【誕生まで1時間10分】
この時間帯になると
妻もさすがに陣痛であることは理解していた。
初産の場合。
陣痛の前にある「前駆陣痛」というもの含めると
痛み始め⇒出産までの時間が
1日~2日かかる人もざらだという。
例えこれが陣痛であったとしても
まだまだ長い戦いの始まり。
旦那は朝になって起こせばいい
いけるとこまでいってみよー、と
肝の据わった覚悟でもって
実際に生まれる直前まで
1人でじっと耐え抜いた彼女。

妻の強さが果てしない。
13日 03:30 【誕生まで10分】
「妻が激しい痛みを訴えてます。
これからそちらに伺ってもよろしいでしょうか?」
妻に起こされ、電話を促された僕は
なんとか状況を理解した後
慌てて深夜の産婦人科に連絡した。
「奥様は電話にでられますか?」
「無理だそうです。とてもツラいようで」
「痛みの間隔は何分くらいですか?」
「一定ではないんですが、すでに5分~10分程度のようです」
そんなやり取りをしている僕のそばで
ずっと我慢し続けていた彼女が
突然、堰を切ったかのように叫んだ。
「あー!!出るっ!!」
「・・・。
あ、あの。
妻が『出る』って・・・言うてます」
「えっ!?うそ!!
出るって赤ちゃんっ!?
・・・すぐに準備をしますので
来れそうなら、すぐに来てください!!
十分気をつけて!!」
彼女の叫び声で、一気に状況が変わった。
いや、
状況は少しずつ、徐々に変わっていたのだけれど
妻を含む僕らの認識が
この緊急事態に追いついた、というのが正しいか。
妻はどこかのタイミングですでに破水していて
これまでの痛みは本陣痛だった。
生まれるまでの時間の猶予が
どれくらいあるのかわからないけど
赤ん坊の頭はすでに彼女から出かけている。
僕はこれまでにないほど焦った。
病院へ行くために車の鍵を探すのだけど
半分パニックで室内を右往左往。
「焼肉屋に・・・行った時の服・・・の中」
女の人って本当にすごい。
赤ちゃん出かかっている人生初体験の最中に
鍵のありかを冷静に思い出せるのだもの。感服。
車を玄関に回し
妻を迎えに行った時
ちょうど痛みの最高潮だった。
「歩けるか?」
「ムリムリムリムリ!!」
痛みが引くタイミングまで待ち
肩を抱かせてゆっくり歩く。
「あ・・・ああ・・・出そう!出そうや!出るっ!」
階段を降りる途中で彼女が叫ぶ。
「いやいやいや!ダメよ!
もうちょい我慢!まだ出さんじょって!」
考えたくはない「万が一」を考えて
僕は彼女の足の付け根に手を添えながら
ゆっくりゆっくり階段を降りる。
妻をなんとか後部座席に乗せたけれど
時間に余裕があるとは思えない。
落ち着いて。
でも、急いで。
間違いなく、人生で一番緊張するドライブ。
僕は運転席に乗り込み
ジワッとアクセルを踏んだ。
13日 03:40 【誕生まで0分】
その時は突然訪れた。

危ない体勢で運転をしていた最中
妻が大きな声で叫ぶと
僕の左手が重みを感じた。
運転中の僕は振り返ることができないが
ショーツ越しに受け取ったのは
まぎれもなく、赤ん坊だった。
いったん運転を止めて対応するべきか
一秒でも早く病院に向かうべきか。
悩む僕を置いてけぼりに
赤ん坊は一気に「ズリュッ」と出てきて
運よく掴みやすい格好で、背中が掌に収まった。
その直後、僕の手の中で
出てきたばかりの赤ん坊が
初めてとは思えない見事な発声で
この世界の空気を煌びやかに震わせた。
これが出産までの一部始終。
病院についてからがまた
見事なまでの爆笑エピソードがチラホラ。
僕に根気があればこっそり書いちょきます。
とにかく無事でホントに良かった。

唄う仏壇屋ともども
末永く宜しくお願い致します。
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